2017-10

サイトメガロウイルスが胎盤を通過する機序

 久しぶりのサイトメガロウイルス(CMV)関連の記事です。

 以前、哺乳類の胎盤形成にはウイルスが関与していることを書きました。内在性レトロウイルス(Endogenous Retrovirus : ERV)の働きにより、胎盤では細胞が融合し、合胞体栄養膜細胞が形成されます。
 合胞体栄養膜細胞は、母親の免疫担当細胞を胎児側に侵入させることなく、栄養分や液性免疫物質(抗体)等を胎児側に通過させる役割をもっています。

 しかし、CMVは胎盤の合胞体栄養膜細胞層を通過して、胎児に感染します。そこには驚きのメカニズムが存在しています。

CMV-胎盤


 合胞体栄養膜細胞は母体の免疫グロブリン IgGを胎児側へ能動輸送しています。その合胞体栄養膜細胞の能動輸送のシステムによって、IgG抗体と結合したCMVが胎児側へ運ばれるのです。(図の青矢印の部分

 さらに、CMVが胎児組織に感染するには抗体の抗原結合力(Avidity)が関与していると考えられています。

 IgG中和抗体とCMVとがしっかり結合していれば問題ありません。
 しかし、抗原(CMV)と結合力が弱い低Avidity の IgG抗体だと、合胞体栄養膜細胞層を通過した後に、CMVがIgG抗体から外れてしまい、CMVが栄養膜幹細胞に感染します。栄養膜幹細胞で増殖したCMVは臍帯を通り、胎児に感染が波及します。
 結局、低Avidity IgG抗体の存在がCMVの胎児への感染を助長してしまうというわけです。

  感染して間もない時期(初感染)では、母体血清には低Avidity IgG抗体が存在しています。母体がCMV初感染の場合に、胎児へのCMV感染の確率が高くなるのはこのような理由からです。
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