2017-08

インフルエンザウイルスが感染するための条件(鳥インフルエンザウイルスがヒトで流行しにくい理由)

 インフルエンザウイルスが宿主に感染するためには最低2つの条件が必要です。
 ひとつは前項・前々項で挙げました。インフルエンザウイルスが宿主の酵素によってヘマグルチニンが開裂して活性化することです。
 もうひとつはヘマグルチニンの開裂部位に対応するウイルスレセプター(受容体)が宿主細胞にあるか否かです。

インフル感染条件

 細胞におけるインフルエンザウイルスの受容体は細胞膜に存在する糖タンパク質のシアル酸です。(シアル酸とはノイラミン酸 (neuraminic acid) のアミノ基やヒドロキシ基が置換された物質を総称です。)

 ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンはガラクトースとα2-6結合したシアル酸と高い親和性を持っています。一方、鳥インフルエンザウイルスのヘマグルチニンはα2-3結合したシアル酸と結合します。
 ヒトの上気道にはα2-6結合シアル酸が存在しており、鳥の消化管にはα2-3結合シアル酸が存在しています。ヒトインフルエンザウイルスがヒトの上気道に感染するのは、ヒト型レセプターとのシアル酸結合様式が関与していることになります。

zu2a.gif


zu2b.gif

↑科学技術振興機構(JST) のホームページより


 これらシアル酸受容体の結合様式のため、鳥インフルエンザウイルスは容易にはヒトに感染しません。

 しかし、ヒトの下気道(肺)にはα2-3結合シアル酸が存在することが証明されています。
 よって、鳥インフルエンザウイルス感染源と濃厚な接触、例えばウイルスが下気道(肺)に直接到達するような接触があれば、ヒトが鳥インフルエンザウイルスに感染することがあり得る訳です。ただし、この場合にはヒトからヒトへの流行は起こりにくいです。

 今後、鳥インフルエンザウイルスにおいてα2-6結合(ヒト型)シアル酸への結合能が上昇するヘマグチニン遺伝子変異が起こる可能性があります。こちらの場合は、ヒトからヒトへの流行が起こり得ることも考慮すべきです。
 その時を想定した社会的な対応策の検討が急がれています。


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