2013-10

先天性CMV感染は増えているのか?

 近年、妊婦におけるCMVの抗体保有率(既感染率)が低下しているとの報告があります。1880年代は95%近い抗体保有率でしたが、1990年代になると年を追うごとに抗体陽性率が低下しているとの報告が相次ぎました(下表)。
(宮崎では2000年頃まで妊婦のCMV抗体陽性率は低下していませんでした。最近は80%前後で推移してます。)
妊婦のCMV感染率


 CMV抗体保有率が少なくなっているということは、CMV未感染の妊婦が増えていることを示しており、未感染妊婦がCMVに初感染する頻度が増えるため、CMV感染児の出生が増えてくると考えられました。

 では、先天性CMV感染の発生率は増えているのでしょうか?

 妊婦の抗体保有率が90%を超えていた時代(20〜30年前)、先天性CMV感染の発生率は0.4%くらいであろうと推測されていました。
 妊婦の抗体陽性率が減った現在、平成20〜24年度厚労省科学研究( http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/results.html ) によれば、先天性CMV感染の発生率は 0.31% でした。

 妊婦の抗体陽性率が下がったからといって、先天性CMV感染児の発生率が増えているという訳ではないようです。私も羊水を検体としてCMV核酸診断等で胎内CMV感染を調べていますが、この20年間で児への感染率が増えたという実感はありません。

CMV感染率と感染児出生率
(図クリックで拡大)

 先天性CMV感染について世界のデータがあります(上図)。欧米には妊婦のCMV抗体陽性率が50〜70%の国が多いのですが、先天性CMV感染児の出生率は0.3%未満〜1.1%程度です。アメリカでは都市によって先天性CMV感染児の出生率が異なっています。

 逆に女性のCMV感染率が90%を超える国をみると、ブラジルで0.5〜1.1%、インドでは1.5%以上と、抗体保有率が高い国で先天性CMV感染児が高頻度で出生しています。

 『抗体保有率が高いと先天性CMV感染児の出生頻度は少なく、抗体保有率が低いと感染児の出生頻度が多くなる』という想定は正しいとは言えないようです。
 各国(都市)でCMVの抗体保有率や先天性感染率の差異を述べるためには、単に感染様式だけでなく、生活様式、哺育様式、経済、文化の違いなどをも考慮しなければならないのでしょう。

 本邦において先天性CMV感染の発生率が大きくなっているとはいえません。しかし、初感染妊婦さんから生まれる先天性感染児の頻度は多くなってきているとは言えます。
 すなわち、感染児の出生率は変わらずとも、より重症のCMV感染症児が出生している可能性があるということです。

 今後は患児数だけでなく、重症度や予後をも十分に考慮した詳細な調査が必要になると考えています。

風しんワクチンのこと

 MRワクチンの原価は6,000円くらい、それに初診料や手技料もろもろを含めると通常 9,000円くらいです。それ以上の費用がかかる医療施設もあります(行政からのワクチン接種料金助成が無い場合。もちろん自費です)。
 風疹や先天性風疹症候群への理解度もさることながら、個人負担費用の壁はやはり大きいと感じます。

 さて、私の職場で全職員の抗体力価を測定したころ、約1/4の職員が抗体陰性あるいは低力価抗体価でした(職員の年齢的に予想通りの結果)。

 ニュース報道だけでは理解し難いところがあるようなので、風疹・先天性風新症候群を理解してもらう説明会を行ったりしました。また、風疹ワクチンを接種しやすいように、ワクチン費用助成の院内起案を作りました。
 これで、どれだけの接種率向上につながなるでしょうか? 高接種率に期待したいです。


(以下、私見ということで・・・)

 前述しましたが、MRワクチン接種を行政が費用助成しているところがあります。
 しかし、Rワクチン(麻疹抗原が入っていない、風疹のみのワクチン)に対しては助成対象となっていない行政が多いです。

 MRワクチンの原価は6,000円くらい。Rワクチンの原価はMRの半額 (2,800円)くらいです。

 現在はMRワクチンが流通していますが、今後Rワクチンが流通して、Rワクチンを接種できたとしても行政からの助成は受けられないのです。
 行政の予算内で多くの人に接種することを考えるのなら、Rワクチンのみの場合の費用助成をも計画しておくべきだろうと考えます。

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