2017-08

トキソプラズマとL-dopa(レボドパ)

 前項で、トキソプラズマ原虫はヒトの中枢神経で神経伝達物質となるドーパミンの前駆体であるL-dopa(レボドパ)を生成する遺伝子を有すると書きました。

 L-dopa(L-Dihydroxyphenylalanine)はアミノ酸のひとつであるチロシンから合成され、さらにドーパミンへと変化する物質です。
 なお、パーキンソン病は中枢神経でドーパミンの不足(アセチルコリンの相対的増加)が原因で、安静時振戦、筋固縮、無動・寡動、姿勢保持反射異常を呈する疾患です。

 さらにドーパミンからはノルアドレナリンやアドレナリンが合成されます。ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンは基本骨格にカテコールとアミンを有するため、まとめてカテコールアミンと呼ばれています。

L-dopa Toxo

 カテコールアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)は血液脳関門を通過しないので、末梢で産生・投与されたカテコールアミンは末梢でのみ作用します。
 しかし、レボドパは血液脳関門を通過し、脳内で作用します。(よってレボドパはパーキンソン病治療薬となっています。)

 話を戻して、トキソプラズマ原虫(Toxo)は中枢神経に侵入し、しかもレボドパの産生に関わる遺伝子を有しています。
 Toxo の感染による脳内ドーパミン量の変化とその影響が注目されています。

トキソプラズマ原虫とサイトメガロウイルスの乗り物

 TORCH症候群を引き起こす(O: Others その他を除く)病原体の多くはウイルスですが、Toxoplasama gondii (Toxo) は原虫に属す微生物です。

 原虫は真核生物に属し、原核生物の細菌よりも、ヒトに近い生物です。
 面白いことに、Toxo はヒトの中枢神経で神経伝達物質となるドーパミンの前駆体であるL-dopa(レボドパ)を生成する遺伝子を有することが判明しています。

Toxoplasma gondii
↑ 緑色が組織中の Toxoplasma gondii
 http://news.nationalgeographic.com/より

 一方、ベータヘルペスウイルス亜科に属するサイトメガロウイルス(CMV)はリンパ球や単球・マクロファージ系の細胞に潜伏感染することが知られています。

 最近、Toxo は単球・マクロファージ系細胞に似た樹状細胞に感染することが分かってきました。
 樹状細胞は単球・マクロファージ系細胞と同様に抗原提示機能を持つ免疫担当細胞のひとつです。通常は組織に貼り付いており、全身を回る事はありません。
 しかし、Toxoが樹状細胞に感染すると、その樹状細胞は全身を回るようになります。すなわち、Toxoは樹状細胞に入ったまま脳内に到達するのです。

 Toxo も CMVも免疫担当細胞である単球・マクロファージに関連する細胞を乗り物として全身に広がります。
 先天性のトキソプラズマ感染症やCMV感染症を考えるうえで、どちらの原因微生物も免疫系の細胞を利用して体内で感染を拡げるというのは非常に興味深いです。

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