2017-05

どんな所見が認められたら胎児へのサイトメガロウイルス感染の可能性を強く疑うか

 インフルエンザや感染性胃腸炎がの流行のピークが過ぎました。ぼちぼち、ブログを更新したいと思います。
 
 さて、母体がサイトメガロウイルスに感染した際に、どのような症状・所見が認められたら、胎児への感染の可能性が高くなるか? この疑問について、神戸大学産婦人科との共同研究を行いました。

 
 サイトメガロウイルス感染を示唆する所見として以下の症状・所見・検査結果について調べてみました。

1 母体の感冒症状
2 胎児超音波異常所見
3 母体血清 抗サイトメガロウイルス IgG・IgM抗体価
4 サイトメガロウイルス抗原血症(アンチジェネミア)陽性
5 IgG 抗体 avidity index 低値(初感染疑い)
6 母体血・尿・膣頸管粘液中のサイトメガロウイルスDNA陽性


 結果として多変量解析によって、

2  胎児超音波異常所見
5  IgG 抗体 avidity index 低値
6' 腟頸管粘液中サイトメガロウイルスDNA陽性(血液、尿検体ではない)


 これらの3因子が先天性サイトメガロウイルス感染の独立した予測因子として選択されました。
 
 言い換えれば、単に母体のIgM抗体が陽性であっても、胎児へのサイトメガロウイルス感染を積極的に疑う因子とはならないということです。また、臨床的検査として定期的に詳細な胎児超音波診断を実施して、胎児の状態を確認することが非常に重要だとも言えます。

先天性CMV感染の発生率の疑問

 2015年4月20日-24日
 国際サイトメガロウイルス(CMV/βヘルペスウイルスワークショップがオーストラリアのブリスベーンで開催されます。

 ここのセミナーで提示されるであろう資料に目がいきました(下の写真)。血清抗体陽性率(Seroprevalence)が高ければ、先天性CMV感染の率は高くなり(左側 A のグラフ)、先天性風疹症候群(右側 Bのグラフ)の発生率は低くなるというものです。

 先天性風疹症候群はワクチン接種で抗体陽性率を高めておけば、先天性風疹症候群の発生率は低くなるという、今の予防接種対策に繋がるところがあります。

 しかし、CMVの場合は抗体陽性率が高くなれば先天性CMV感染が増えてくるというAの資料は慎重に議論するところがあります。
 近年、産科・小児科関連学会において唱えられている、『日本において妊婦のCMV感染率が低下しており、妊娠中のCMV初感染によって、先天性CMV感染が増えているであろう。』という説に相反するものだからです。

 もちろん先天性CMV感染と先天性CMV感染症という重症度は考慮されていません。先天性CMV感染については1983年に Stagno らが発表したデータで、当時とは検査方法も異なります。

 今一度、本邦における先天性CMV感染の発生率を詳細に検討する必要があるかと考えています。

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臨床検査データブック 2015-1016

 臨床検査データブック 2015-2016年度版

 サイトメガロウイルスに関して、抗体検査、抗原検査、核酸検査、薬剤耐性遺伝子検査など8項目を執筆しました。

 単に検査値が異常か否かで判断するのではなく、検査値となるメカニズムや結果の評価法について記載してあります。考える検査法を目指した本です。
 お値段 4,800円 内容の濃さからすると、安いと思っております・・・。

臨床検査データブック2015-2016

先天性サイトメガロウイルス感染症の記事(2月19日読売新聞夕刊)

 2月19日付の読売新聞夕刊(東京本社版)を入手しました。先天性サイトメガロウイルス感染症の妊娠管理等について記事が掲載されています。私もサイトメガロウイルス感染細胞の免疫染色の写真を提供しています。

 さて、今年1月から実施されている医療費助成に係わる難病および小児慢性特定疾病として、『先天性風疹症候群』と『先天性ヘルペスウイルス感染症』、二つの先天性感染症が含まれています。

 しかし、予防接種による予防法がなく、患児数が圧倒的に多い『先天性サイトメガロウイルス感染症(および、その他の先天性感染症)』が含まれていません。認知度を問題とするならば、一般の方への認知度がさらに低いと思われる先天性疾患は医療費助成対象疾病に含まれています。

 個人的には、先天性サイトメガロウイルス感染症は小児慢性特定疾病に含まれるべき疾病であると考えています。

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サイトメガロウイルス抗体検査における保険診療と問題点

 保険診療において、ウイルス抗体価検査料金は原則的に以下のようになっています。

1. 同一ウイルスについてIgG抗体価およびIgM抗体を測定した場合は、いずれか一方の点数を算定する。
2. 免疫グロブリンクラス別ウイルス抗体検査と定性・半定量・定量ウイルス抗体価検査 (例として補体結合反応法:CF法) を合わせて測定した場合、いずれか一方の点数を算定する。

 ということで、抗サイトメガロウイルスの抗体検査において、
1) IgM抗体とIgG 抗体を同時に測定した場合は、どちらかの検査料金が自費扱いになります (EIA法によるIgM抗体検査とIgG 抗体検査の料金は同額です)。
2) CF法の抗体検査とIgM抗体あるいはIgG抗体検査を実施した場合は、通常は検査費用が安いCF法測定分を自費請求されます。

 ちなみにCMV抗体検査の実施判断保険点数は、EIA法による抗サイトメガロウイルスIgG抗体測定およびIgM抗体測定がそれぞれ230点(2300円、3割負担で690円)。CF法の保険点数は79点(790円、3割負担で237円)です。

サイトメガロウイルス抗体検査において、初感染の可能性があるのか、最近の抗原刺激(活動的な感染状態)があったかなどを判断するためには、IgG 抗体とIgM抗体を同時測定することが望ましいです。しかし、IgG 抗体とIgM抗体の同時測定は保険診療として認められておらず、2300円分の被検者負担金が生じてしまうことになります。

サイトメガロウイルスに限らず、先天性感染症(特にTORCH症候群)に関して、妊婦様の検査負担金が安くなるような保険検査制度を望んでいます。

サイトメガロウイルス (CMV) 抗体検査の原則

しばしば質問を受けるのですが、臨床の先生方にとっては判断が難しいようです。ここでCMV感染の特徴とその抗CMV抗体検査の原則を書き並べてみます。

CMV感染の特徴(潜伏感染

1. 初感染の後に潜伏感染し、既感染状態となった後にも再活性化により回帰感染となる。すなわち、CMVは終生持続感染し、一度感染すると体内から取り除くことはできない。(インフルエンザウイルスなど急性感染を起こすウイルスとは異なる。)
2. 初感染時、回帰感染時、または異なるCMV株による感染(重感染)が起こった時に抗原刺激が起こる(IgM抗体が陽性となる)。
3. 潜伏感染の時に感染症として発症することはない。また、他人や胎児に移すこともない (http://aisenkaicdc.blog.fc2.com/blog-entry-35.html)。

抗CMV抗体検査の原則

1. IgG抗体価に正常値や異常値は存在しない。IgG抗体陽性であることは感染したことを示すに過ぎない。
2. IgG抗体が上昇したことを証明するには、時間をおいて再度ペア血清として測定する必要がある。IgG抗体価が高値であることと、抗体価上昇の意味は全く異なる。
3. 補体結合反応(CF)による抗体検査は原則として推奨しない。感度・特異度に問題がある。
4. 最近のCMV抗原刺激により産生される抗体として、IgM抗体やオリゴマーIgA抗体があり、これらを検出できれば活動的なCMV感染が最近あったかを証明できる。
5. 活動的なCMV感染イコール初感染ではない。既感染となっても回帰感染や重感染による活動的CMV感染は起こる。すなわち、IgM抗体陽性は初感染の証明にはならない。
6. 感染時期(初感染時期)を推定する検査として、抗CMV IgG抗体Avidity Index 測定が試みられている(http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/igg.html)。


厚生労働科学研究 先天性サイトメガロウイルス感染

 あけましておめでとうございます。

 昨年のクリスマス号の教育医事新聞に以下の厚生労働科学研究の記事が紹介されていました。
 私もこの研究班の分担研究者でしたので、余計に感じるのかもしれませんが、縦書きタイトルがちょっと残念です。
 病原体名と疾患名(または状態)が中途半端になってて、違和感を感じてます。先天性サイトメガロウイルス感染(症) にして欲しかったな。

教育医事新聞

 とはいえ、上記の記事内容は研究班(山田班)の成果を評価してくださったものと、ありがたく受け止めています。

関西テレビで先天性CMV感染症特集の放送

 12月4日に関西テレビのスーパーニュースアンカーで先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症の特集放送がありました。

 この放送に先立ち、関西テレビにCMV粒子の写真を提供させていただきました。
↓(この写真です)
CMV粒子


 放送で現在の先天性CMV感染症の問題が浮かび上がっていたようです。
内容については以下の関西テレビのHPをご参照ください。

 平成25年12月4日スーパーニュースアンカー18時台の特集


妊婦が初感染だった場合のサイトメガロウイルスの胎児への伝播率(CMV子宮内感染率)

 妊娠中にサイトメガロウイルス(CMV)初感染すると、高い確率で妊婦から胎児へウイルスが伝播することが知られています。
 妊娠中に感染した時期(妊娠週数)と胎児への伝播率を示した図がありますのご紹介します。

妊婦初感染時のCMV伝播率
クリックで拡大↑

 15の研究データの平均は黒点で表されています。
 それによれば、妊娠初期と中期では胎児への感染率は30%〜40%台となっています。これはCMV初感染妊婦における胎児への感染率として、以前から想定されていた感染率と合致しています。
 妊娠の後期になると胎児への感染率はさらに高まり、60%台となります。

 妊婦がCMVに初感染した場合、妊娠のすべての時期でCMVが胎児に伝播する可能性があること考えた方がよさそうです。

 ただし、感染した胎児が全員発症するとは限りません。一般的に妊婦が初感染して妊娠12週までに胎児に感染すると症状が重くなる傾向にあります。

今後のCMV感染症

 職場の机を整理してたら、3年前の講演のパンフレットが出てきました。

ランチョンセミナー


 免疫グロブリン製剤はサイトメガロウイルス(CMV)感染症に直接関与するのではなく、細菌感染症対策を通して間接的にCMV感染症対策となる旨を発表しました。

 以前は私に臓器移植後の CMV感染症対策の問い合わせがしばしばありました。しかし、このセミナーを境にして、最近はめっきり問い合わせが少なくなりました。臓器移植の現場でサイトメガロウイルス(CMV)感染症対策マニュアルが整備されてきたからだろうと思います。
 このこともあって、最近、私はもっぱら先天性感染症としてのCMV感染に関わるようになってきてます。(先天性感染症繋がりで、先天性風疹症候群やトキプラズマ症、HIV感染症にも手を出してます。)

 臓器移植後のCMV感染症患者には、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、フォスカルネット等の抗CMV薬を使用できます。仮にそれらの投与によって骨髄機能障害などの副作用が出たとしても、血球輸血などの対応策が講じられます。
 しかし、胎児に対して抗CMV薬の投与はなかなかできません。抗CMV薬は副作用が強いですし、胎児に抗CMV薬の副作用が出現したら、その後の対応ができないからです。抗CMV薬は感染児の出生後にやっと使用できる状態です。

 感染症においては感染予防、診断・治療、後遺症対策が重要です。さらに先天性感染症においては、全胎児を対象にした先天性感染の診断、感染後の重症化阻止のための研究が必要になってくるかと思います。

 先天性感染症に対しては、まだまだやる事がたくさんありますね。

先天性CMV感染は増えているのか?

 近年、妊婦におけるCMVの抗体保有率(既感染率)が低下しているとの報告があります。1880年代は95%近い抗体保有率でしたが、1990年代になると年を追うごとに抗体陽性率が低下しているとの報告が相次ぎました(下表)。
(宮崎では2000年頃まで妊婦のCMV抗体陽性率は低下していませんでした。最近は80%前後で推移してます。)
妊婦のCMV感染率


 CMV抗体保有率が少なくなっているということは、CMV未感染の妊婦が増えていることを示しており、未感染妊婦がCMVに初感染する頻度が増えるため、CMV感染児の出生が増えてくると考えられました。

 では、先天性CMV感染の発生率は増えているのでしょうか?

 妊婦の抗体保有率が90%を超えていた時代(20〜30年前)、先天性CMV感染の発生率は0.4%くらいであろうと推測されていました。
 妊婦の抗体陽性率が減った現在、平成20〜24年度厚労省科学研究( http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/results.html ) によれば、先天性CMV感染の発生率は 0.31% でした。

 妊婦の抗体陽性率が下がったからといって、先天性CMV感染児の発生率が増えているという訳ではないようです。私も羊水を検体としてCMV核酸診断等で胎内CMV感染を調べていますが、この20年間で児への感染率が増えたという実感はありません。

CMV感染率と感染児出生率
(図クリックで拡大)

 先天性CMV感染について世界のデータがあります(上図)。欧米には妊婦のCMV抗体陽性率が50〜70%の国が多いのですが、先天性CMV感染児の出生率は0.3%未満〜1.1%程度です。アメリカでは都市によって先天性CMV感染児の出生率が異なっています。

 逆に女性のCMV感染率が90%を超える国をみると、ブラジルで0.5〜1.1%、インドでは1.5%以上と、抗体保有率が高い国で先天性CMV感染児が高頻度で出生しています。

 『抗体保有率が高いと先天性CMV感染児の出生頻度は少なく、抗体保有率が低いと感染児の出生頻度が多くなる』という想定は正しいとは言えないようです。
 各国(都市)でCMVの抗体保有率や先天性感染率の差異を述べるためには、単に感染様式だけでなく、生活様式、哺育様式、経済、文化の違いなどをも考慮しなければならないのでしょう。

 本邦において先天性CMV感染の発生率が大きくなっているとはいえません。しかし、初感染妊婦さんから生まれる先天性感染児の頻度は多くなってきているとは言えます。
 すなわち、感染児の出生率は変わらずとも、より重症のCMV感染症児が出生している可能性があるということです。

 今後は患児数だけでなく、重症度や予後をも十分に考慮した詳細な調査が必要になると考えています。

にちなんぢゃ様 Cowdry A型封入体?

 地元日南市の観光イメージキャラクター『にちなんぢゃ様』です。
(日南市観光協会)

にちなんじゃ様

 私には『にちなんぢゃ様』の目がサイトメガロウイルス感染細胞の 「Cowdry A型封入体」に見えてしまいます。
カツオ老中さんの目もやはり Cowdry A型の核内封入体に見えてしまう。

 こんな感染細胞ね↓

Cowdry A

仕事に疲れていますかねぇ?!

サイトメガロウイルス感染細胞(腎)

 サイトメガロウイルス感染細胞では以下のような変化がよく見られます。

1 巨大化
2 封入体形成
  サイトメガロウイルス感染組織では、核内封入体の周囲に halo (空隙)を形成する Cowdry A 型封入体がしばしば見られます。

Cowdry A

↑ こんな感じにCowdry A型封入体が見えます。

 実際のCMV感染腎組織は↓(クリックで拡大)
CMV腎
 尿細管にCowdry A型封入体がたくさん見られます。
 サイトメガロウイルスが尿中に多量排泄されることが想像できるかと思います。

 妊婦さんや免疫が低下している方は乳幼児のおむつの扱いに注意しましょう。

先天性サイトメガロウイルス感染における羊水検査の時期

 前項で使った図を再掲します。

CMV-胎盤

 サイトメガロウイルス(CMV)が胎児に感染すると、後に胎児はウイルスを羊水に排出するようになります。羊水を採取してウイルス学的にCMVを検出できれば胎児感染が判明することになります。

 では、いつ羊水検査をするか・・・『今でしょ。』というわけには行きません。CMV感染経過と胎児の尿排泄能を考慮する必要があります。

1)重症のCMV感染児は妊娠初期(妊娠第12週まで)の感染に多い
2)母体の感染から羊水中にCMVが検出されるまでに6週〜9週かかる
3)胎児の尿排泄機構は妊娠第20〜21週頃に完成する

 以上のことから、先天性CMV感染における羊水検査は妊娠第21週〜23週くらいに実施が良いと考えられます。

 これより前の時期でも羊水にCMVが検出されることはあります。しかし、羊水採取時期が早すぎると偽陰性になりうることも考えておくべきです。

サイトメガロウイルスが胎盤を通過する機序

 久しぶりのサイトメガロウイルス(CMV)関連の記事です。

 以前、哺乳類の胎盤形成にはウイルスが関与していることを書きました。内在性レトロウイルス(Endogenous Retrovirus : ERV)の働きにより、胎盤では細胞が融合し、合胞体栄養膜細胞が形成されます。
 合胞体栄養膜細胞は、母親の免疫担当細胞を胎児側に侵入させることなく、栄養分や液性免疫物質(抗体)等を胎児側に通過させる役割をもっています。

 しかし、CMVは胎盤の合胞体栄養膜細胞層を通過して、胎児に感染します。そこには驚きのメカニズムが存在しています。

CMV-胎盤


 合胞体栄養膜細胞は母体の免疫グロブリン IgGを胎児側へ能動輸送しています。その合胞体栄養膜細胞の能動輸送のシステムによって、IgG抗体と結合したCMVが胎児側へ運ばれるのです。(図の青矢印の部分

 さらに、CMVが胎児組織に感染するには抗体の抗原結合力(Avidity)が関与していると考えられています。

 IgG中和抗体とCMVとがしっかり結合していれば問題ありません。
 しかし、抗原(CMV)と結合力が弱い低Avidity の IgG抗体だと、合胞体栄養膜細胞層を通過した後に、CMVがIgG抗体から外れてしまい、CMVが栄養膜幹細胞に感染します。栄養膜幹細胞で増殖したCMVは臍帯を通り、胎児に感染が波及します。
 結局、低Avidity IgG抗体の存在がCMVの胎児への感染を助長してしまうというわけです。

  感染して間もない時期(初感染)では、母体血清には低Avidity IgG抗体が存在しています。母体がCMV初感染の場合に、胎児へのCMV感染の確率が高くなるのはこのような理由からです。

あれれ?!

 閑話です。

 ウイルスを中国語で書くと『病毒』となるけれど・・・

 私が書いたサイトメガロウイルス母子感染経路の総説が、中国語に訳されて、知らない間に出版されていました。
http://d.wanfangdata.com.cn/Periodical_rbyxjs200108022.aspx
(巨細胞病毒ってタイトルになってるし)

 これって、著作権はどうなっていたんでしょうかねぇ?

臨床検査データブック

 ちょっと宣伝!

 医学書院から発売されている『臨床検査データブック 2013ー2014』
 サイトメガロウイルスの臨床検査項目を執筆してます。検査の評価法について、私なりの意見を書かせていただいてます。

執筆担当項目
○ サイトメガロウイルス抗体
○ サイトメガロウイルスIgG抗体アビディティー・インデックス
○ サイトメガロウイルス抗原
○ サイトメガロウイルス核酸診断
○ ガンシクロビル耐性サイトメガロウイルス遺伝子解析
○ サイトメガロウイルス特異的細胞傷害性T細胞解析
○ サイトメガロウイルス抗原血症検査

臨床検査データブック
5,040円です。

健康歳時記 フクロウの目

 ずいぶん前になりますが、全国地方新聞のいくつかにサイトメガロウイルスの記事を掲載してもらったことがあります。

 ↓クリックでちょっとだけ拡大できます。
フクロウの目

アンチセンス抗CMV薬:ホミビルセン

 1998年最初のアンチセンス技術を使った医薬品が米国で認可されました。抗サイトメガロウイルス (CMV) 薬のホミビルセン Fomivirsen です。
 従来の抗CMV化学療法剤がCMV遺伝子の産物である酵素を標的とするCMV DNA合成阻害剤であるのに対して、ホミビルセンはCMV遺伝子の翻訳阻害という全く新しいメカニズムによってその効果を発揮します。

ホミビルセン
(↑ クリックで拡大)

 ホミビルセンは21塩基からなるオリゴヌクレオチド化合物です。その塩基配列は 5'-GCG TTT GCT CTT CTT CTT GCG-3' です。ただし、ホミビルセンは分解されにくいように硫黄がリン酸基部位に入ってます。この塩基配列はCMVの前初期2 ( IE-2 ) 遺伝子から転写されるmRNAと相補的になっています。
 IE-2 mRNAにホミビルセンが結合することにより、いわゆるアンチセンスメカニズムによりCMV IE蛋白の産生が抑制されます。ホミビルセンは既知のヒト遺伝子由来のmRNAとは結合せず、CMVに対してのみ選択毒性が発揮されます。

抗サイトメガロウイルス薬の作用機序

 抗サイトメガロウイルス(CMV)化学療法剤として、ガンシクロビル (Ganciclovir: GCV)、バルガンシクロビル(Valganciclovir: VGCV)、シドホビル (Cidofovir: CDV)、ホスカルネット (Foscarnet: FOS) の4薬が欧米で用いられ、本邦ではGCV、VGCVとFOSの3薬が保険認可されています。これらの抗CMV薬はすべてCMVのDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)阻害作用により効果を発揮します。

(↓ クリックで拡大)
抗CMV薬

 VGCVはGCVにアミノ酸のバリンが結合させて経口吸収率が高められており、吸収後は速やかにGCVに変換されるプロドラッグです。よって、VGCVの作用機序や効能はGCVと同じです。

 GCV (VGCV) と CDV はCMV DNA合成酵素の基質であるデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)と競合的に拮抗することによって、CMV DNAの伸長を阻害します。

 GCVはグアノシンのアナログで、CMVゲノムのUL97遺伝子産物であるホスホトランスフェラーゼ (リン酸基転移酵素) によって1リン酸化され、細胞のリン酸化酵素によって最終的に3リン酸となり、CMVのDNAポリメラーゼ (UL54遺伝子産物) を阻害します。

 CDVはヌクレオチド (シチジル酸) のアナログで既にリン酸基を1個持っています。CDVではホスホトランスフェラーゼを必要とせず、細胞のリン酸化酵素によって2個のリン酸基が付加され、CMVのDNAポリメラーゼを阻害します。

 一方、FOSはピロリン酸のアナログであり、CMV DNAポリメラーゼのピロリン酸結合部位に直接作用して、その活性を抑制します。

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