2017-09

『母子感染の実態把握及び検査・治療に関する研究 』の研究成果

 日本医療研究開発機構 (前 厚生労働科学研究) 『母子感染の実態把握及び検査・治療に関する研究 ( http://cmvtoxo.umin.jp ) 』 では、妊娠中のサイトメガロウイルス外因感染を防ぐために、妊婦さんに感染リスクを減らすための 7項目を指導しています。

 この指導を行ったところ、先天性サイトメガロウイルス感染の数が本当に減ってしまいました。
 研究班として実態把握のための先天性感染者数が集まりにくいという状況になりましたが、指導・啓発による感染予防効果が絶大だということが判明しました。

 この研究班の最大の研究成果ということに...。

7か条

心理的反発

サイトメガロウイルスの研究内容を、臓器移植から先天性感染症にシフトした時から感じていることです。

臓器移植後の感染症では、発症早期に迅速診断を行うほど救命率が高くなります。

先天性感染症でもそれは同じ。『出生前に感染が分かれば、出生後直ぐの対応ができる、先天感染症児の救命率の向上に役立つはず。』と考えていました。

でも、現実は全く逆でした。
もちろん、妊婦さんに研究検査のインフォームドコンセントを行い、検査実施の承諾を得ていました。
でも、先天性感染の研究目的の検査を実施しただけ、結果的に人口流産が増えました。特に胎児が発症しているか定かではない状況下での中絶が増えて行きました。

ある法律家が『胎児にはまだ人権がない。胎児自身には自らの命を選ぶ権利はない。親だけが胎児の命の選択権を持っているんです。』と言ってきました。

そうは言われても、納得できません。
法律は人に適応させるもの。では、人以外の生物は、人権みたいな権利は考慮しなくても良いの?
ヒトを含んだ全ての生物の営みが根本にあって、それは社会構築や法律遵守以上に大事なんじゃないの?!

こんな反社会的、反法規的な考えのまま、今だに先天性感染症の研究を続けています。

寄生虫

 サナダムシ? に続く寄生虫の話です。

 馬刺しのように馬肉を生で食べれる理由をインターネットで調べてみると、多くの馬肉販売店のホームページに『馬の体温は牛や豚より5~6度高いので寄生虫が住みつきにくい』とありました(文面もほぼ同じコピー&ペースト状態です)。

 でも、獣医学の本には
ニワトリ…40~42℃
豚・羊…38〜39℃
牛…38.8℃前後
馬… 37〜37.8℃(競走馬は疾走後に一時的に40℃ほどになるようです。)
とあります。

 また、馬の寄生虫として条虫、回虫、糸状虫等々が獣寄生虫学書に記載されています。

 馬の寄生虫はヒトに寄生しにくいだけで、『馬の体温が高いから寄生虫が住みつきにくい』とは言えないようです。

 加熱調理をして食べるのは人間だけです。他の動物は生ものを食べています(人工飼料で飼育してる家畜を除く)。
 放し飼いされて、生き生きとしている家畜ほどさまざまな物を口にする機会も増えます。すなわち、寄生虫などと接触する機会も増えます。野山を駆け回っている健康的な動物(家畜)ほど寄生虫や病原微生物がいて当然と考えるべきでしょう。
 『新鮮だから生で食べても大丈夫』とは言えないのです。

 小中学校時代の社会の教科書に、人類が火を使うようになった年代が書かれていました。今更ながらに、その医学的な意味の大きさを感じています。

 『人類は火を使う事で寄生虫症や腸管感染症になりにくくなる機会を得る事ができた。』

サナダムシ?

 ご相談がありました。

1) トイレに行ったら長さ数cm、幅5-8mmほどのムシが出て来た
2) そのムシは節があって、動いていた
3) 自覚症状は特になし
4) 数週間前に牛の生レバー(レバ刺し)を食べた
5) 海外渡航はしていない
            とのこと。

いろいろ考えて・・・
A) 無鉤条虫(ウシ)、有鉤条虫(ブタ)、広節裂頭条虫(サケ、マス)・・カッコは中間宿主
B) 広節裂頭条虫は片節が連なって排泄されることが多いが、無鉤条虫や有鉤条虫は数個の片節 (数cm) がちぎれてでてくる
C) 無鉤条虫の片節はよく動く、有鉤条虫の片節はあまり動かない

 以上の理由から無鉤条虫(カギナシサナダムシ)の可能性が高いこと。また、確定診断には頭節や片節の確認が必要であること。駆虫薬のプラジカンテルは無鉤条虫症や広節裂頭条症に対して保険適用になっておらず、治療費が高くなることを説明させていただきました(プラジカンテルは吸虫症薬として保険適用あり)。

Taenia_saginata_adult_5260_lores.jpg
無鉤条虫(Wikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Taenia_saginata より)

 昨年7月に腸管出血性大腸菌感染症への対策として、牛のレバーを生食用として販売・提供することが禁止されました。
 厚生労働省は腸管出血性大腸菌のみを大きく問題にしています。しかし、レバーや肉の生食においては、カンピロバクター等の他の細菌性食中毒や寄生虫症、さらにはトキソプラズマ症など母子感染症の原因になりうることも意識しておくべきです。

検査について

 7月22日(一昨日)の午前10時50分頃に、抗サイトメガロウイルスIgG抗体Avidity Index に関して、どこからかの医療施設から電話で問い合わせがありました。

 その時、ちょうど私は無菌操作中で電話応対ができませんでした。そこで、約10分後に再度連絡をしてくださるように電話交換(病院事務局)から相手方にお願いしました。

 でも、それから、連絡がありません………。
  医療施設名がはっきりとわからず、電話をかけてきた方の名前も、折り返しの連絡先も不明のままです。

 単なる検査の問い合わせならともかく、実際にIgG抗体Avidity検査を必要とされる妊婦様がいらっしゃったのではないかと気になってます。

 もし、この件に気がつかれましたら、再度のご連絡をお待ちしてます。私が不在でも、ご連絡先を電話交換に伝えてくだされば助かります。(FAXでの問い合わせでも受け付けています。)

ひびわれ壷

 仕事の関係上、さまざまな障害を持った人(特に子供)と接しており、そんな子供達の療育の大変さを訴えるご両親らと話をする機会があります。。
 時間があればで、ご両親にある絵本を待ち合いで勧めています。作者不詳、菅原裕子さん訳の『ひびわれ壷(二見書房)』という絵本です。

ひびわれ壷

 『花の種をまける親になりましょうよ。』・・・・絵本を読んでくださったご両親にそう言葉をかけています。

以下、ひびわれ壷の物語を引用します。
---------------------------------------------
 インドのある水汲み人足は2つの壺を持っていました。
 天秤棒の端にそれぞれの壺を下げ、首の後ろで天秤棒を左右にかけて、彼は水を運びます。
 その壺の一つにはひびが入っています。もう一つの完璧な壺が、小川からご主人様の家まで一滴の水もこぼさないのに、ひび割れ壷は人足が水をいっぱい入れても、ご主人さまの家に着くころには半分になっているのです。
 完璧な壺は、いつも自分を誇りに思っていました。なぜなら、彼が作られたその本来の目的をいつも達成できたから。
 ひび割れ壷はいつも自分を恥じていました。なぜなら、彼が作られたその本来の目的を、彼は半分しか達成することができなかったから。

 2年が過ぎ、すっかりみじめになっていたひび割れ壷は、ある日、川のほとりで水汲み人足に話しかけました。
「私は自分が恥ずかしい。そしてあなたにすまないと思っている。」
「なぜそんなふうに思うの? 何を恥じているの?」
水汲み人足は尋ねました。
「この2年間、私はこのひび割れのせいで、あなたのご主人さまの家まで水を半分しか運べなかった。水が漏れてしまうから、あなたがどんな努力をしても、その努力が報われることがない。私はそれがつらいんだ。」
壷は言いました。
水汲み人足はひび割れ壷を気の毒に思い、そして言いました。
「これからご主人様の家に帰る途中、道端に咲いているきれいな花を見てごらん。」

 天秤棒にぶら下げられて丘を登って行くとき、ひび割れ壷はおひさまに照らされ美しく咲き誇る道端の花に気付きました。
 花は本当に美しく、壷はちょっと元気になった気がしましたが、ご主人様の家に着くころには、また水を半分漏らしてしまった自分を恥じて、水汲み人足に謝りました。
 すると彼は言ったのです。
「道端の花に気付いたかい? そして花が君の側しか咲いていないのに気付いたかい? 僕は君からこぼれおちる水に気付いて、君が通る側に花の種をまいたんだ。そして君は毎日、僕たちが小川から帰る途中、水をまいてくれた。この2年間、僕は、ご主人様の食卓に花を欠かしたことがない。君があるがままの君じゃなかったら、ご主人さまはこの美しさで家を飾ることはできなかったんだよ。」

海馬

 前項は海の中のウイルスの話でした。海つながりでタツノオトシゴ関連の話を書きます。

 タツノオトシゴを英語で書くと Seahorse、直訳すると海馬です。
 医学的に海馬といえば、大脳辺縁系の一部で、記憶や空間学習に関わる脳器官を指します。(ちなみに脳構造の海馬の英名は Hippocampus です。)

HippocampusFrontal.gif
           ↑海馬(Hippocampus)の場所
(http://brainmind.com/BrainOverview.htmlより)


 なぜ、脳の構造名として海馬、いわゆるタツノオトシゴなのか。海馬を取り出してみると分かります。

Hippocampus_and_seahorse_cropped.jpg
↑海馬とタツノオトシゴ 形そっくり!
(http://en.wikipedia.org/wiki/Hippocampus より)

 長い間、中枢神経系は一度傷害されると再生しないと考えられてきました。しかし、近年の研究により海馬には神経幹細胞が存在することが判明してます。
 海馬を中心とした神経刺激により、この神経幹細胞が活性化し、新たに神経細胞が増殖していくのです。そのため、運動や感覚刺激、リハビリテーション継続の重要性が問われています。

 日常生活の中にも何かに感動して、神経新生を促したいものです。

回文:パリンドローム

 旧約聖書のアダムとイヴのクイズ。
アダムがイヴに最初にかけた(英語の)言葉は?

 答えは "Madam, I'm Adam."(ご婦人、私はアダムです。)

 Madam の語源は、Ma= my と Dame=Lady です。アダムの骨からイヴが作られたという説がありますので、アダムがイヴに Madam(My Lady)と声掛けしたのも納得できます。

 さて、"Madam, I'm Adam." これを後ろから読んでみてください。
 MADAM IM ADAM とすれば分かり易いでしょうか。

 そう、Madam, I'm Adam. は、「新聞紙(しんぶんし)」や 「竹薮焼けた(たけやぶやけた)」と同様に回文 (パリンドローム) なのです。

 さて、分子生物学においてもパリンドローム構造が大切です。
  (2本鎖構造の) DNAなどで一方の鎖の5′側から読んだ場合と、もう一方の鎖 (相補鎖) を5′側から読んだ場合に塩基配列が同じになる部位の構造をパリンドローム構造と言います。

(6塩基パリンドローム構造の例)
5'-GATATC-3'
3'-CTATAG-5'


 遺伝子組み換え技術などでよく利用する制限酵素は、このようなDNAのパリンドローム構造の部位を認識してDNAを切断します。

ちょっと昔話

 前項のアビディティーの測定法を書いている時に思い出したことがあります。

 1999年イギリスのブライトンにおいて、第7回国際サイトメガロウイルス ワークショップが開催されました。

 このワークショップにおいて、アビディティー・インデックス(AI)を利用したサイトメガロウイルス(CMV)感染妊婦の管理法がポスター発表されていました。

 発表ポスターの前で、上司の南嶋洋一先生や川名尚先生(現帝京平成看護短期大学学長)から、『妊婦の血清の抗CMV AI 測定を日本で実施してみたい、いや、するべきだ。』と声をかけられました。
 南嶋先生や川名先生の言葉が耳に残り、しばらくしてAI測定系の実験を始めました。

ワークショップの帰りは、平井莞二先生(当時 東京医科歯科大学教授)と向かい合わせの席でした。ヘルペスウイルス学の話をしながら、急行電車でロンドンまで戻りました。その時に私と話したことを平井先生は学会関係誌に記録してくださいました。

 それから、数ヶ月後に平井先生は東京医科歯科大学の教授室で急逝されました。ちょうど、私がAI測定系を臨床的に応用できるようになった頃でした。

私の疾患の考え方

 病院では週に1回診療を担当させてもらっています。私が担当している患者様の多くは神経疾患と内分泌・代謝性疾患の方です。
 本来はウイルス研究が本職の私が、専門外の疾患の方々をどうして診察しているかというと・・・。

 神経伝達物質、生体防御反応物質、ホルモン。これらはすべて細胞が産生・放出して、生体の状態に変化を起こす物質です。
 違いといえば作用時間です。神経伝達物質は秒単位、生体防御反応物質は数分から数時間、ホルモンは数時間から数日の単位で生体に作用します。

 まずは専門のウイルス学/感染症学を基準にして、免疫担当細胞などから産生される物質を頭に思い浮かべます。
 次に生体反応物質を作用時間差で想像して、神経疾患や内分泌・代謝性疾患の病態をイメージしてます。この発想方法は私の診察には結構役立っています。

 ホルモンは自分に作用する物質、フェロモンは他人(主に異性)に作用する物質!
たまにはフェロモンが作用して自分に生体反応がおこるとうれしいかもです。

ヒトとネズミの親類関係

『哺乳類はネズミ(マウス)のような動物からヒトへと進化した。』と聞く事があります。
このような話を聞くと、ネズミとヒトは哺乳類の中では随分違う動物のように感じてしまいます。

しかし、哺乳類の系統分類からいえば、ヒトとネズミは親戚のような関係です。

 哺乳類の系統分類で、哺乳類ー真獣下鋼ー北方真獣類ー真主齧上目 まで分類していくと、それから先は図のようになります。

サルの分類

 ヒトが属するサル目ー真主獣大目とネズミが属する齧歯目ーグリレス大目とはお隣さんなのです。
 哺乳類はヒトへと進化してきたというより、多様化した結果ヒトが存在すると考えるべきなのでしょう。

マスクの裏表

 インフルエンザ予防として不織布マスクの着用が勧められています。でも、コンビニや通販サイトで紹介されているマスクの絵・写真をみたら、違和感が・・・

item_0000012949_2.jpg

 ↑この写真は表と裏を間違えて装着してます。プリーツ(ひだ)の向きが逆なのです。

マスク

↑製品袋でもプリーツの向きが逆になってました。

 正しい説明は業務用マスクのマザーズさんの、『マスクのことはおまかせなサイト!!』を見てください。ゴミがたまらないようにプリーツを下向きに着用するのが正解です。

カープ コイ

 日南は飫肥藩5万1千石の城下町でした。観光協会は飫肥城下町の水路に錦鯉を放って、観光客を楽しませていました。(飫肥城下町ー日南市観光協会

 しかし、昨年9月に水路の鯉にコイヘルペスウイルス(koi herpesvirus) 病が見つかったため、今は水路に錦鯉はいません。

 さて、日南には2月にはもうひとつのコイがやってきます。プロ野球セリーグの広島東洋カープの春期キャンプのことです(広島東洋カープ 公式サイト)。
 2月13日にはWBC日本代表の山本浩二監督がカープのキャンプを視察していました。
# 近くのキャンプ地にはライオン(埼玉西武ライオンズ)もいます。

 ところで、コイヘルペスウイルスであって、カープヘルペスウイルスとは言いません。英語で Carp と Koi の違いは何でしょうか。
 Carp は一般的なコイ、Koi は錦鯉のことです。
 錦鯉は日本の国魚で、そのまま英語で Koi になっています。

レインボー

 数日前に職場から虹を見ました。ちなみに右側の建物は旧研究所です。

Rainbow.jpg

 普段、太陽光は明るいか暗いかを意識するにすぎません。でも、太陽光の鮮やかなグラデーションは気分を晴れやかにしてくれました。

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